魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
最後は開き直って、勢いで送信した。


既読表示はつかない。
さっき以上にソワソワして、お腹の底から深い息を吐く。
スマホを握りしめ、喉を仰け反らせて夜空を仰いだ。
一瞬強く吹いた夜風が冷たい。
身震いして部屋に戻ろうとすると、握りしめたスマホから着信音がした。


「っ、え?」


ギョッとしてモニターに目を落とすと、『神凪さん』と表示されている。
心臓が、ドキンと跳ね上がった。


「え? え?」


これって、パリから?
国際電話なんて高いのに、出ちゃっていいの?
でも、私が応答を迷っている間も、着信はやまない。
私は意を決して、応答ボタンをタップした。


「は、はい。もしも……」

『出るのが遅い。待ちくたびれた』


最後まで言い切る前に、不機嫌そうな声に阻まれる。
私は無意識に瞬きを繰り返し……。


「でも、電話代かかりませんよね……?」

『は?』

「あ、だから。私が出るまでは、電話代はかかってないので」

『……金じゃねえよ』


わずかな間の後、神凪さんが深い溜め息をついた。


「え?」

『あー……まあいい』


まるで煙に巻くように、話を引き取る。


『LINE、サンキュ』


つっけんどんな口調で話題を変えられ、私は慌てて首を横に振った。
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