魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「いえ……これ、お返事の電話ですか? LINE一行で十分だっ……」

『お前、ほんとつれないな。今なら繋がるって確信したから、かけたんだよ』


淡々と詰られて、私は返す言葉に窮した。


『遠い日本からのお疲れ様って言葉が嬉しい……って、ほんとだった』


独り言みたいなしみじみとした呟きが、耳をくすぐる。


「えっと……?」

『いい。お前にわかるわけがない。俺も、理解を求めちゃいない』


上から目線で蔑むような言い方に、私もムッときた。


「なんですか、それ。神凪さんがわからない私の方が悪いみたい」


部屋の中に戻りながら、唇を尖らせて文句を挟む。


『俺からしたらな』

「言っときますけど、世の女性の大多数は私の味方ですよ? 神凪さんの方がよっぽど理解不能……」

『自覚したよ。だから俺も、芽唯にははっきり伝えるって決めた。さっきのLINE、飛び上がるくらい嬉しかった』

「っ、へ?」


早口で捲し立てられ、目を丸くした。


『ニヤけるの抑えられなくて、久遠さんと水無瀬にも浮かれてるの見破られた。女か? 無事着いたって早く電話してやれ……って』


電波に乗って届くのは、ぶっきら棒な声だけ。
彼の姿は見えないのに、きまり悪そうに前髪を掻き上げる様が容易に想像できる。
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