魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
私は、唖然としながらもきゅんとして……。


「今日のキャプテン、久遠さんだったんですか」


気を取り直し、彼の言葉尻を拾って質問した。


『ん。リリーフがスタンバイだった水無瀬。三日後の帰国便も同じ面子だ』

「キャプテンと食事中に中座したりして、大丈夫ですか?」


機長と言えば、副操縦士の彼にとっては上司だ。
日本の古いサラリーマン像に思考を囚われ、神凪さんの立場的なものを心配した私に、


『ぶっ……平気平気』


彼は、吹き出して答えた。


『一緒に食事には来たけど、みんな会話の傍でスマホ気にしてる。水無瀬は奥さん、久遠さんは彼女とLINEしてる』

「そ、そうですか。……それでどうして、神凪さんだけ電話……?」


彼の説明に一瞬納得しかけたものの、私ははたと気付いて首を捻った。
神凪さんは、ほんの少し逡巡するような間を置くと。


『俺は二人と違って、今が攻め時だから』

「は?」

『二人のアドバイスに従った。ああ、お前は聞き流していいよ』


意味を考えて相槌も打てない私に、素っ気なく話題を引き取ろうとしたものの。


『……俺、海外ステイ中に、わざわざ女に連絡したことないから。でも、本気でものにしたい女なら、金と手間を惜しむなって言われてさ』

「……!」
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