魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
私にははっきり伝えるという前言を実行したのか、不貞腐れた様子で話してくれた内容に、ドキンと心臓が跳ね上がった。
返事に詰まる私に、微かに苦笑したような吐息の後。


『悪い。キャプテン公認とはいえ、あんまり長々と喋ってるわけにもいかないな。そろそろ戻る』

「あ。は、はい」


彼の言葉に導かれ、私は耳からスマホを離した。
モニターには、『3:30』と通話時間が表示されている。


せっかくの国際電話、ただの雑談で時間を費やしてしまった。
このまま電話を終えたくないけど、もったいなくて悔やまれて――。


「神凪さん。お土産買ってきてくれるって言ったじゃないですか」


私は、カーテンを閉めた窓に凭れかかり、自分の足の爪先に目を落とした。
『ん?』と反応する低い声が、鼓膜をくすぐる。


『希望ある? いいよ。言ってみ』

「いえ、なにも」

『頑固に遠慮しても、奥ゆかしいなんて思ってやらないよ?』


揶揄する口調に、かぶりを振って――。


「元気に帰ってきてください」


喉に引っかかって掠れる声で返した。


『え?』

「〜〜だからっ。早く帰ってきてください。私、待ってますからっ」


私なりに、勇気を振り絞ったのに。
二度繰り返す羞恥に悶絶しそうになって、私はつっけんどんに言い切った。
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