魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「それに。パリ便のキャプテン、久遠さんだそうです。リリーフにスタンバイだった水無瀬さん」


ムキになって、腕組みをして捲し立てると、


「そうなの?」


きょとんと目を丸くする佐伯さんを視界の端で捉え、無駄に大きく頷いて応えた。


「お二人がいるなら、心配ありません。そもそも、悪天候で危険なら、着陸時のPFは久遠さんが務めるはず……」

「まあ、そうだろうな」


わりとあっさり納得してくれて、相槌を打つ彼にホッとした。
吐息交じりに、胸を撫で下ろしたのも束の間――。


「……で? なんでお前、神凪どころか、久遠さんと水無瀬が乗務してることまで知ってるの?」

「え?」

「しかも、水無瀬に至ってはスタンバイってレア情報。どの筋だ?」

「……!」


悪戯っぽく瞳を動かしてツッコまれ、私はグッと口ごもった。


「まさか、神凪がパリから連絡してきた? あ、いやお前の方?」

「それは、えっと……」

「どっちからにしても、槍が降ってもおかしくない希少事態だ」

「う……」


挙動不審になって目を泳がせる私に、佐伯さんがブッと吹き出した。


「くっくっくっ……」


遠慮なく肩を揺らす様に、私はわなわなと震えて……。


「〜〜佐伯さんっ!!」

「ごめんごめん。いや、この間、本当に余計な心配だったな。仲良くやってるようでなにより」


目尻に涙を浮かべて言われ、私はがっくりと肩を落とした。
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