魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
こうして、私は店の外まで連行され――。


「ちょっと、なんなんですか」


彼が「ふう」と一息ついた隙を突き、肩を大きく動かして腕を解いた。
手を払われた格好になった彼が、きょとんとした目をする。
反対の手に持っていた、カジュアルながら一流ブランドのボディバッグを肩にかけると。


「あの中に、目当ての男でもいた?」


店の出入口を親指で指し、ひょいと肩を竦める。


「そのわりに、興味なさそうにポツンとしていたようだけど」


会話の輪に入らず、端っこに身を寄せていた私なんか、彼の視界の端を掠めもしなかっただろうと思っていたのに。
一瞬意表を突かれたものの、すぐに気を取り直す。


「そういうことではなくて」

「ああ、いい。後日フォローでもなんでもしてやる。だから今晩のところは勘弁して」


私の言うことには耳も貸さずに、勝手に話を纏めようとする。


「だから、そうではなくて」


私は纏められないように声を張って、じっとりと彼を睨み上げた。
身長百五十五センチの私だと、顎を仰け反らせないといけない。
多分、百八十センチ近い長身だ。
Vネックのざっくりしたニットの襟元から、チラチラ覗いて見える綺麗に浮き出た鎖骨。
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