魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
羽田到着まで、あと二時間。
水無瀬が難しい顔をしてコックピットのドアを開け、休憩を終えた俺を迎えてくれた。


「お疲れ。どうした?」


俺は副操縦士席に着きながら、オブザーバーシートに腰を下ろす彼を振り返る。


「羽田。予想以上に大荒れだそうだよ」

「え?」

「やはり、ウィンドシアー警報が出ている。管制の情報によると、すでに五機がゴーアラウンドしたようだ」


久遠さんに答えられ、俺はドップラーの機上レーダーに視線を走らせた。
進行方向は緑に黄色、ピンクに紫の波形が顕著だ。


「そのため、羽田上空で十五機が旋回して着陸待機している。こっちはパリからだからな。渋滞に並んで長いこと旋回して、ゴーアラウンドを繰り返せるほど、燃料に余裕はない」

「では、できる限り一発でランディングしないと……ですね」

「ああ」


俺の返答に、久遠さんが相槌を打つ。
水無瀬が身を乗り出してきたのが、視界の端に映った。


「だからと言って気負うな、神凪。下手したら、ハードランディングになる恐れがある。無理せず、PFは久遠さんに任せた方が……」

「キャプテン。俺にやらせてください」


彼の進言を遮って、俺は久遠さんに志願した。


「神凪」
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