魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「着陸時ウィンドシアーでの操縦は今までも経験があり、不安はないです。大丈夫ですから」


水無瀬の制止を振り切って言い募る俺に、久遠さんはまっすぐ視線を返す。


「色気づくなと言っておいたが?」

「むしろ、傍目からはとんでもなくカッコ悪くランディングしますよ」


俺は苦笑で応え、再びレーダーに目を遣った。


「昨晩からの雨で滑走路は濡れ、コンディションは最悪でしょう。ウィンドシアー警報発令なら、着地時の横風成分約30ノットを予測します。バウンドやスリップによるオーバーランを防ぐため、着陸速度を落としてやや強めの接地を試み、早急にスポイラーを作動させる。できます。やらせてください」


俺の説明に、久遠さんはふっと口角を上げた。
水無瀬にちらりと視線を流す。


「当機のコーパイはこう言ってるが。水無瀬。お前の見解は?」


水無瀬は、きゅっと唇を結んだ。
困ったように眉尻を下げ、やれやれといった顔つきで……。


「着陸方法に異論はありません。キャプテンの判断にお任せします」


久遠さんは何度か首を縦に振って理解を示し、再び俺に顔を向けた。


「予定通り、ランディングはお前に任せる。だが、少しでも危ういと思ったら、どのタイミングでも俺が替わる。いいな?」

「はい」
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