魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
俺は軽く深呼吸をして、パキパキと指を鳴らした。


「ランディングまでは俺が操縦する。お前はレーダーと計器類に注意しつつ、ランディングシミュレーションしておけ。I have」

「はい。You have」


俺たちのやりとりの途中で、シートに深く背を預ける水無瀬を横目に、俺は久遠さんにそう応じた。


やや強めの接地――。
滑走路が積雪、凍結していたり、滑走路が短い場合や追い風時にも行う、いわゆる『ドシン』と飛び降りるようなランディングだ。
状況に応じた速度設定が難しい上に、ある程度の衝撃は避けられない。
怖がる乗客もいるし、実際キャビンで悲鳴が沸くこともある。
しかし、これにはもちろん理由がある。


着陸後の減速制動には、スポイラー、逆噴射装置、車輪ブレーキ、機体そのものの抵抗が必要だが、滑るようにスムーズなランディングでは、それらのシステムが機体の接地を認識して作動するまでにわずかなタイムラグが生じる。
コンディションが悪く滑りやすい滑走路では、スポイラーと逆噴射装置の効きが特に重要で、システムを迅速に作動させるため、意図的に強めに接地させるのだ。
ハードランディングとまでは言わなくても、機体、特にギアを傷める恐れもある。


「……許せ、芽唯」


俺は二人に聞こえないよう独り言ち、手の甲で口元を押さえた。
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