魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
筋肉質な航空整備士の先輩たちとは違うタイプの、引き締まった体型なのがよくわかる。
彼は、私の視線に居心地悪そうに、額に降りた前髪をザッと掻き上げた。
そして。


「どうしてわかった? 俺が整備士じゃないって」


微妙に瞳を横に動かし、愚問としか言えない質問をしてくる。


「当然です。私、航空整備士ですから」


ムッとしたまま、素っ気なく返事をすると。


「え?」

「そりゃ、羽田ベースの千五百人の顔と名前を知ってるわけじゃないですけど、あなたが先輩の中にいないのはわかります」

「……マジか」


胸を張って言い切る私の前で、彼は大きく目を見開いて口元を手で覆った。
「それに」と、私は先を続ける。


「まだ国家資格を取ったばかりですけど、私もスポットで整備に入ってます。その時、あなたのことを見たことがあります。副操縦士の……」

「……神凪。神凪愁生(しゅうせい)


彼は言い募る私の先を引き取って、忌々しげな溜め息をつき、


「そっちは?」


私を顎で示して訊ねてくる。


「椎名芽唯です。今年度から787のライン整備チームの配属になりました」

「787……もしかして、佐伯の?」

「え? はい」
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