魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「女とか小さいとか、色眼鏡で見ないでください。私だって、航空整備士です」

「え?」

「そ、そりゃ、男性の整備士には敵わないこともあるけどっ……」

「喚くな。別に、女だからって馬鹿にしてるわけじゃない。ああ、もちろん、航空整備士の仕事もね」


横柄に阻まれ、グッと口ごもる。
それでも不満を隠せない私に、彼は眉尻を下げた。


「俺も787の副操縦士だ。お前たちが完璧な仕事をしてくれるから、安心して空を飛べる。同じシップに携わる一員として、心の底から敬意を払っているつもりだよ」


言葉とは裏腹な薄笑いが鼻につく。
私は黙ったまま、彼をじっとりと見据えた。
神凪さんは、困ったような苦笑いに変わり、


「航空整備士なんて偽ったから、信用してもらえないか。悪かったよ」


額を軽く小突かれ、私は思わず両手を額に当てた。


「俺、子供の頃、幼馴染の女の子に『大きくなったらパイロットになって』って言われてね。その子の夢叶えてやったはずなのに、どうしてだか航空整備士と付き合ってるんだよね、ソイツ」


同情を誘おうとしているのか、どこか哀愁を帯びた目をして自嘲気味に語る。
宥めすかして場を抑えようとしているように感じられて、私はさらに警戒心を強めた。
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