魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
とっさに身を引こうとして、カウンターに置いた手をギュッと掴んで止められる。


「っ」

「本当に。俺も、相手は選ぶ」


わざわざ顔を覗き込んできて、意地悪で余計な一言をポロリ。
私は勢いよく手を引っ込め……。


「ど、どういう意味ですか」


神凪さんが、緩やかに口角を上げた。


「友人の仕事の後輩に手出したら、後々面倒臭い」


裏を返せば、自分の日常にまったく無関係で後腐れない女だったら手を出せる……と受け取れる。
遊び人発言と断定した私は、両手でグラスを持ち、ムカムカしながら口元に運んだ。
バーテンダーのオススメ通り、爽やかで喉越しがいい。
続けて二口飲んで、喉を湿らせてから。


「選外のようでよかったですけど、別に言い訳しなくていいです」

「言い訳？」

「佐伯さんの後輩じゃなくても、私にはそんな気も起きないでしょう」


ハッと短い息を吐き、刺々しくそっぽを向いた。
神凪さんがピクッと頬を引き攣らせた様が、視界の端に映り込む。


「どうして決めつける」

「私たちの仕事、馬鹿にしてるじゃないですか」

「え？」

「さっき、聞こえてました。航空整備士ってカッコいいだろ、って言うの」


無駄にテンポよく会話を交わすうちに、私のイライラは徐々に強まっていった。
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