魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「なにが間違ってる？　お前はダサいと思ってるのか」


神凪さんは喉を仰け反らせ、スコッチグラスを傾けた。
先ほどまでとは違い荒っぽい仕草だから、彼の方も苛立ち始めたのが感じられる。


「思ってません。パイロットよりずっとずっとカッコいい仕事です」

「なら、それでいいじゃないか」

「女性侍らせて操縦桿握った経験を自慢したいなら、ちゃんと副操縦士だって言えばいいじゃないですか。なのに、わざわざ幼馴染の女の子の話なんて引き合いに出して、私に言い訳する自体意味不明。上から目線で馬鹿にしてるとしか思えません」

「…………」


興奮して語気が荒くなる私に返す言葉に窮したのか、神凪さんは苦い顔をして唇を結んだ。
グラスに残った琥珀色の液体を一気に飲み干すと。


「すみません、同じの」


カウンターの向こうのバーテンダーに、グラスを揺らして合図をした。
新しいグラスを受け取ると、大きく肩を動かして息をして。


「お前、自分の仕事が恥ずかしいのか？」

「……は？」


眉根を寄せて鋭い視線を投げられ、私は一瞬ポカンとしてしまった。
神凪さんはカウンターの上でグラスを両手で支え、私に横目を流す。
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