魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「上から目線で馬鹿にしてるとか。お前自身がなにか引け目に感じているから、他職種の俺に被害妄想で突っかかる」

「っ」


心の奥底にしまっていた痛い記憶を突かれた気分で、私はギクッとして手を震わせた。
一度両手を合わせて固く握りしめ、震えを抑えてからグッと顎を上げる。


「どうして私が自分の仕事を引け目に感じてるなんて、決めつけるんですか」

「お前の先輩の佐伯がそうだったからだよ」


躊躇なく即答されて、不本意にも言葉に詰まった。
神凪さんは、グラスを摘まんでユラユラ揺らしながら、


「俺たちパイロットやCA、グランドスタッフの同期が集まる同期会には、顔を出したがらない」


もう片方の手を顔の高さに持ち上げ、親指を折る。


「俺、油臭いだろ? 近付くな、汚れるから。理由はそんなことだ」

「っ……」


神凪さんが指折り数えるそれが、佐伯さんの言葉なのはよくわかる。


「自分の仕事には人一倍誇りとプライド持ってるくせに、その一方でやたらと空とか地上だとか気にして、俺たちに引け目を感じて矛盾ばかり……」

「佐伯さんの悪口、言わないでくださいっ!」


私は彼の話の途中で、両手でグラスを口に運んだ。
グイと角度をつけて、ゴッゴッと音を立ててカクテルを一気に飲み干す。
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