魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
ボディバッグと一緒に無造作に放り出されていたのは、コンビニの白いビニール袋だ。
そこから、スポーツ飲料水のペットボトルを二つ持って、ベッドに戻ってくる。


「ん」

「あ、ありがとう、ございます……」


一本胸元に突き出され、ほぼ条件反射で受け取った。
神凪さんはなにも言わず、私の隣に腰かけ長い足を組み上げた。
自分の分の蓋を開け、喉を仰け反らせて勢いよく飲み出す。


「…………」


私は仕方なく彼に倣って、ペットボトルの蓋を開けた。
五百ミリのペットボトルが、とても重く感じる。
両手で口元に運び、一口飲んだ途端。


「お前、佐伯のこと好きなのか?」

「ごほっ……」


率直で遠慮のない質問をされて、盛大に吹いてしまった。


「っ、な、なんっ……!?」


激しく噎せ返り涙目になりながら、彼に質問の意図を問おうとした。
神凪さんはまったく意に介した様子はなく、「ふーん」と鼻で笑う。


「やっぱりな」

「や、やっぱりって、なんでですか。私、別に佐伯さんのことなんて」


なんとか呼吸を整え、虚勢を張って言い返した私に、ちらりと視線をくれる。


「バーで話してた時は、偉大な先輩によほど傾倒してるんだろうと思った。でも、ここまでおんぶしてくる途中も、俺の耳元で何度も呼んでたからさ。『佐伯さん、佐伯さん』って」
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