魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「……!!」


私は、あまりの衝撃に目を剥いた。
絶句したのが答えとして十分だったのか、彼は意地悪にふっと目を細める。


「職場の先輩。オフィスラブってヤツか。あんまり熱く呼ぶから、正直ちょっと妬け……」

「……お」

「お?」


私は目の前が真っ暗になった気分で、弾かれたように立ち上がった。
その勢いのまま、腰を九十度折って頭を下げる。


「お願いします、佐伯さんに喋ったりしないでください!!」

「え?」

「佐伯さんは、とっても男気のある人です。神凪さんが仰った通り、航空整備士の仕事に誇りを持って、その気持ちに恥じない立派な態度で飛行機と向き合ってます。それなのに、後輩の私が神聖なハンガーで邪な目で見てたなんて知ったら、幻滅されます……!」

「おいおい。佐伯は確かに整備バカだが、そんな朴念仁じゃない」


悲壮になって早口で捲し立てる私に、神凪さんはやや引き気味に背を反らした。


「普通に女に興味あるし、可愛い後輩から好きだなんて言われたら、食いついたに決まって……」

「絶対迷惑なだけです」


宥め透かすように続ける途中で、私は大きく首を横に振って断言した。
神凪さんは唇を結んで、何度かパチパチと瞬きをしてから、


「はーん……佐伯の彼女がCAって知ってるんだ」


顎を撫で、しげしげと呟く。
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