魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
神凪さんはイヤホンを外しながら、足を引いて回れ右をした。
そして、横柄に腰に手を当て――。


「返した理由は、ちゃんとお伝えしたはずですが?」

「私も、お納めくださいって、言ったはずです」


私は膝に手を置いて身体を二つに折り、荒く息を弾ませたまま彼をキッと睨み上げた。


「ホテル代は、予定外だったから」


神凪さんは、ふいとそっぽを向いた。


「誰かさんが、男の大事なところに膝蹴り入れてくれたおかげで」

「っ……」


ボヤき混じりにねっとりと嫌味を言われ、さすがに私もグッと詰まった。
一度肩を動かしてはーっと大きく息を吐き、無理やり呼吸を整えてから身体を起こす。
虚勢を張って、グンと胸を反らし――。


「神凪さんが失礼なことするからです。あれは絶対謝りません」


どうしても、膝蹴りに至った経緯が脳裏をよぎる。
怒りと悔しさと意味不明なドキドキで、頬が染まるのを抑えられない。


「使いものにならなくなったら、どうしてくれるの」


手加減なしの追撃に、さらにカーッと顔を茹だらせ、


「その方が、世の女性には平和です」


腕組みをして言い返した。
神凪さんが、ふんと鼻を鳴らす。
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