魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
その夜、私は何故か、華やかな男女九人が集う飲み会の席にいた。
全員生ビールで乾杯してから、ほんの十数分。
同じ席の至る所で、会話に花が咲いている。


――(はるか)あああっ!!
私はひたすらテーブルの木目を見つめ、ビールジョッキを握った手をプルプル震わせた。


事の発端は、今朝のこと。
夜勤を終え、シャワーを浴びて着替えた後、空港内の職員食堂で朝食をとっていた私は、グランドスタッフの友人、酒匂(さこう)遥から、この『空港勤務者異職種交流会』に誘われた。
職業柄他職種にも顔が広い遥は、主催者からメンバーを集めるよう頼まれたらしい。
彼女と同じグランドスタッフの他、グランドハンドリングやケータリングスタッフ……などなど、普段から飛行機に関わるあらゆる職種の人に声をかけたそうだ。


羽田空港で共に働く『同志』とは言え、どっぷり整備畑の私は、他職種との接点はさほどない。
他の仕事の話が聞けるなら、楽しそうかな……。
大勢が集まるイベントなんていつもは絶対敬遠するのに、我が子を大西洋の空に送り出した後の高揚感から魔が差した。


早番の休憩中だった遥と別れた後、一度帰宅した。
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