魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「私と神凪君ね、小学生の頃から一緒なの。いわゆる幼馴染ってやつ」

「え?」

「私、小さい頃、気管支が弱くてね。しょっちゅう熱出して学校休んで……家が近かったせいで、宿題とか保護者へのお知らせの手紙とか、彼が届けてくれて」


その頃を懐かしむように目元を緩める横顔を見ているうちに、私の心臓が静かに騒ぎ出した。


「そうそう。小学校の修学旅行で、初めて飛行機に乗ることになって楽しみにしてたんだけど、私その時も熱出して行けなくて……」

「もしかして」


昔話を続ける彼女を、私は身を乗り出して阻んだ。


「今野さん、神凪さんに言いましたか? 大きくなったらパイロットになって、って」


答えを急かして畳みかける私に、今野さんは一瞬虚を衝かれたような顔をしたけれど――。


「ああ、うん。そんなこと、言ったこともあったかな」


記憶を手繰るように目線を上に向け、最後は眉尻を下げて笑う。


「でもパイロットって、その程度の動機でなれるほど簡単な職業じゃない。彼自身空や飛行機が好きだから、職業に選んだはずよ」


自分の言葉がきっかけではない……という口振りだけど、私の胸になにかがズンと圧しかかった。
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