魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
頭からも網膜からも彼女の残像を吹き飛ばし、真一文字に唇を結んで、キッと前方を見据える。


函館上空を過ぎ、眼下の景色は千歳へと移り変わっていた。
着陸決心高度まで、およそ百フィートに迫る。


「Approching minimum」


音羽さんのコールに、「Checked」と呼応する。
高度計が示す数値がどんどん下がっていき、新千歳空港の長く連なる白い滑走路灯を目視できた。


「Minimum」

「Landing」


着陸決定をコールした後、数秒の静寂がよぎる。


『Two hundred……One hundred』


機体の高度を伝える自動音声によるコールアウトと共に、対地接近警報装置のワーニング音がコックピットに響くが、今は無視していい。


『Fifty……Twenty……Ten』


メインギアが滑走路に接地して、わずかな振動を感じた。


「Sixty」


音羽さんの対地速度のコールを合図に、俺はジェットエンジンの排気を前方に逆噴射させる装置、リバース・スラスト・レバーを元に戻した。
ゴーッと凄まじい音がする。


飛行機は着陸時でも、時速二百五十キロ以上の速度が出ている。
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