きっと忘れない
数時間後、インターフォンが鳴り、わたしのいとことその子どもが訪ねて来た。
約束していたのだ。

「初めまして、りるちゃんのいとこの海咲(みさき)です。
この子は海音(みおん)です」

海咲は、徹平君に挨拶をする。

「どうも、夏井(なつい) 徹平です」

海咲はわたしにコソッと、

「彼氏かっこいいね」

言った。

海音ちゃんは6歳らしくて、もしわたしがあの時、中絶してなかったら、今の海音ちゃんくらいだ。

「お姉ちゃんは子どもいないの?」

何も知らない海音ちゃんが、わたしに聞いてくる。

「そうだよ、りるちゃん!
かっこいい彼氏もいるのに、赤ちゃん作ったら⋯?」

海咲も何も知らない。
わかってる。

わたしはうまく笑えなくなった。
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