白鳥に魅入られる
驚きを隠しきれていない様子の父に、ましろは訊ねられる。父がましろの名前を呼ぶのは、もう数年ぶりだ。だが、美の神様と軽々しく話せるものではないだろう。
「えっと……」
ましろが戸惑っていると、ヤマトタケルがスッと一歩前に進み出る。そして右足を引き、左手を体の横に添え、左手を横方向へ水平に差し出すようにし、「Bonsoir Monsieur」と言う。それだけでも、まるで舞台のワンシーンのように美しい光景だった。
ヨーロッパ貴族の優雅なお辞儀、そしてヤマトタケルの口から放たれた流暢な異国の言葉に、使用人たちは頰を赤く染め、父と母はポカンとした間抜けな顔を晒し、姉はどこか悔しげな顔をしている。
「私はフランスで商人をしている者です。実は今朝、池に落ちてしまって溺れそうになったところをこのお嬢様に助けていただきました。お嬢様のお召し物が濡れてしまったため、お礼として着物などを買わせていただいたのです」
ヤマトタケルが息を吐くようにスラスラと吐いた嘘を、誰も疑うことはない。彼の見た目が日本人とはかけ離れているからだろう。ましろは、簡単に騙されている家族が何だか滑稽に見えてしまい、笑いを必死に堪えていた。
「えっと……」
ましろが戸惑っていると、ヤマトタケルがスッと一歩前に進み出る。そして右足を引き、左手を体の横に添え、左手を横方向へ水平に差し出すようにし、「Bonsoir Monsieur」と言う。それだけでも、まるで舞台のワンシーンのように美しい光景だった。
ヨーロッパ貴族の優雅なお辞儀、そしてヤマトタケルの口から放たれた流暢な異国の言葉に、使用人たちは頰を赤く染め、父と母はポカンとした間抜けな顔を晒し、姉はどこか悔しげな顔をしている。
「私はフランスで商人をしている者です。実は今朝、池に落ちてしまって溺れそうになったところをこのお嬢様に助けていただきました。お嬢様のお召し物が濡れてしまったため、お礼として着物などを買わせていただいたのです」
ヤマトタケルが息を吐くようにスラスラと吐いた嘘を、誰も疑うことはない。彼の見た目が日本人とはかけ離れているからだろう。ましろは、簡単に騙されている家族が何だか滑稽に見えてしまい、笑いを必死に堪えていた。