白鳥に魅入られる
「フランスで商人を……!素敵ですわ。ぜひお話を聞かせていただきたいです」

姉が頬を赤く染め、瞳を輝かせながらヤマトタケルに近付く。地味な妹にこんなイケメンは相応しくない、必ず奪ってやると言いたげな雰囲気を纏っている。父と母もヤマトタケルに話しかけ、どこか媚びているように見えた。

「ましろ、俺しばらく泊めてもらえることになった。いや〜、うまく演じれたよ。さすが俺!」

ヤマトタケル、そして家族と夕食を食べた後、(ましろも両親や姉と同じものを用意してもらえた)部屋に向かおうとするましろにヤマトタケルが話しかけてくる。顔は華やかで王子様のようなのに子どものように笑う姿を見て、ましろの顔にも笑みが浮かぶ。彼に今日は振り回されてしまったが、可愛い着物などを買ってもらえたことは本当は嬉しかったのだ。

「ヤマトタケル様、本日はありがとうございました」

ましろが頭を下げると、すぐに「頭なんか下げるなよ」と言われる。恐る恐る顔を上げれば、その華やかな顔が目の前にあり、ましろの口から「ひゃあッ!」と悲鳴が漏れる。
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