白鳥に魅入られる
「シッ!誰か来たらどうすんだよ。お前は今、「この家の大事なお嬢様」なんだから」

そうましろはヤマトタケルがいる間は、両親に大切に育てられているお嬢様として扱われることとなった。ヤマトタケルに変な噂を流されよう、そのような演技をすることを両親は決めたようだ。

「どう?可愛く着飾った気分は」

耳元で囁かれ、ましろの顔が赤く染まっていく。背筋がゾクゾクとし、ましろは慌てて彼から離れた。

「お、おやすみなさいませ!!」

そう挨拶をし、ましろはいつもの自室ではなく、お嬢様として大切に育てられていることをアピールしたい両親が急いで用意させたロココ調の家具が揃っている部屋へと向かう。ましろの足取りは早くなり、顔から熱はまだ冷めることがなかった。

(どうしてこんなにも恥ずかしいの?異性と関わることがなかったから?)

真っ赤な顔を押さえているましろが去っていくのを、ヤマトタケルは熱を持った眼差しで見つめている。それはまるで砂糖を煮詰めたように甘く、そして深い闇のように暗い。
< 13 / 20 >

この作品をシェア

pagetop