白鳥に魅入られる
ましろが音のする方へ行ってみると、そこには真っ白な白鳥が網に絡まってもがいていた。白鳥など本の中でしか見たことがない。

「本当に、こんな鳥いるんだ……」

真っ白な羽がバサバサと音を立てる。様々な色に変化することができる白は神聖な色だと、何かの本で読んだ内容がふとましろの頭に浮かんだ。

白鳥はどこか苦しげな様子で羽ばたき、悲しそうな鳴き声を上げている。放っておくことができず、ましろはゆっくりと白鳥に近付く。

「すぐに助けてあげるからね」

絡まった網を時間をかけて解いていく。もう女学院の授業は始まっている。だが、ましろの頭に焦る気持ちはなかった。学校でも、教師や周りの生徒からはこの地味な見た目のせいで気に入られてはいない。ただ少しは勉強ができるというだけだ。

(どうせ、この世界に私の居場所なんてないんだから……)

そんな思いで網に触れる。白鳥は鳴くのをやめ、ジッとましろを見つめていた。

どれほどの時間が経っただろうか。網が解け、白鳥は自由になる。ニコリとましろは白鳥に笑いかける。
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