白鳥に魅入られる
男性の顔から王子様のような気品が消え、無邪気な子どものようになる。自分の容姿を自分で褒めている様子に、ましろは一瞬にして呆気に取られてしまう。

「俺、ヤマトタケルノミコト。この通り美の神!」

パチンとウインクをされ、ましろは「ハァ……」と言うしかできない。何が起こっているのか、さっぱり理解ができていないのだ。

白鳥が突然王子様のような人間になり、ヤマトタケルノミコトと名乗る男性は自分の容姿を自分で褒めている。理解が追いつかない。それを見透かしたかのように、ヤマトタケルはニッと口角を上げる。

「あの白鳥、俺だから。この姿じゃ目立つからあの姿になって街を見てんの。ほらましろ、行くよ」

急に手を引かれ、ましろは驚く。彼の細い腕は、思っていたよりもしっかりしていた。そして、名前をまだ言っていないのに彼は知っている。

「何故、私の名前を……?」

「ずっと見てたからさ、お前のこと」

あいつらを見返しに行くよ、そう言いヤマトタケルは笑った。
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