先生と私の三ヶ月
「私、帰ります!」

 テーブルの向こうの先生が唖然としたようにこっちを見た。
 先生の視線が熱い。胸がドクドク鳴っている。

「あ、あの……」

 なんで追い詰められているんだろう。なんで先生の顔が真っすぐに見られないんだろう。落ち着かなきゃ。膝の上の手をぎゅっと握りしめた。

「その、もう私の仕事は終わりましたから、日本に帰ろうと思いまして。それで先生、あの、半月でしたけど、先生のアシスタントが出来て、とてもいい経験になりました。本当にありがとうございました。それから、流星くんの事では余計な口を挟んでしまい、本当に申し訳なかったです。先生が悪いみたいな言い方をした私の態度も悪かったと反省しています。先生にお会いしたら謝罪したいとずっと思っておりました。本当にすみませんでした」

 立ち上がって、深くお辞儀をした。
 やっと先生に謝れた。これでもう思い残す事はない。明日からまた普通の主婦に戻ろう。

 もう少し先生のそばにいたかったけど……。
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