先生と私の三ヶ月
「ガリ子、今日は何日だ?」
「え?」
 顔を上げると座ったままの先生が私にスマホを見せた。
 そこには今日の日にちがハッキリと表示されている。

 なんで先生、こんな事を聞くの? 先生の意図がわかない。首を傾げていると同じ質問をされた。

「今日は何日だ?」
「7月27日です」
「そうだ。つまり、まだ契約期間という訳だ」
「契約期間……」
 先生との契約は9月30日まで。
 まさか、まだ私を雇ってくれるの?

「まだお前は俺のものだ」

 ドキンっ――!

 先生の言葉が強く心臓を貫いた。胸が強く締め付けられる。顔中だけじゃなくて、身体中が熱い。先生の言葉に激しくドキドキしている。動揺する事じゃないのに。ただ単に先生のアシスタントだという意味なのに。

「勝手に帰られては困る。日本に帰る時は俺と一緒だ。いいな」
 言い聞かせるように先生が私を見た。その表情が優しく見える。
 先生と一緒に帰れる。たったそれだけの事が嬉しくて、胸がウキウキしてくる。

「は、はい」
「という訳で、ガリ子、仕事だ」
 先生がデジカメをテーブルの上に置いた。

「俺は昼まで寝るから、お前はその間に島の写真を撮って来い。いいか、島一周分、全部撮ってくるんだぞ」
「はい。わかりました! 島一周してきます!」
 先生から仕事をもらえる事が嬉しい。先生の役に立てる事に喜びを感じる。アシスタントの仕事が前より好き。
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