先生と私の三ヶ月
電話は黒田からだ。ガリ子がちゃんと到着したか心配しているんだろう。黒田への報告を忘れていたからな。
寝転がったまま、通話ボタンをタップした。
「黒田、心配するな。途中いろいろとトラブルがあったようだが、ガリ子はちゃんと俺の所に来たよ」
ほっとしたように吐き出す息が聞こえた。
「良かったです。実は葉月さんのご主人から出版社に電話があったんです。全く葉月さんと連絡が取れないと心配されていました」
意外だな。ガリ子がいつも旦那からメールの返信がない事を気にしていたから、マメに連絡を寄越すような旦那ではないと思っていたが、ガリ子の事を一応は気にかけているのか。
「ガリ子は空港でスマホを無くしたそうだ。それで連絡が取れないんだろう。黒田、その事をすぐに旦那に伝えてくれるか? それから、ガリ子は元気で俺の仕事を手伝ってくれているから心配はいらないし、危険な事は絶対にさせない。あとホテルの部屋もちゃんと分けている。これは、まあ、旦那が気にしているようだったら伝えといてくれ。くれぐれもガリ子が旦那に叱られる事にならないように言葉には気をつけろよ」
「わかりました。ご主人には私からきちんと伝えておきます」
「うん。頼む」
「ところで先生、小説の進み具合は?」
それが黒田の一番聞きたい事だろう。
俺に小説を書かせる為に、ガリ子をいきなりフランスに送り込む程、強引な男だからな。
「心配するな。筋書き通りに物事は進んでいる」
「では、もう、葉月さんの心は掴んだという事でしょうか?」
俺の書いたプロットではもう結ばれている頃か。
恋愛経験の少ない女は簡単に落とせると思っていたが、現実はそう上手くいかんな。二度も好きだと言ったが、ガリ子には全く相手にされていない。悔しいが、ガリ子の心は旦那にあるんだろう――という事を今は黒田には言えないな。どうしたものか……。
寝転がったまま、通話ボタンをタップした。
「黒田、心配するな。途中いろいろとトラブルがあったようだが、ガリ子はちゃんと俺の所に来たよ」
ほっとしたように吐き出す息が聞こえた。
「良かったです。実は葉月さんのご主人から出版社に電話があったんです。全く葉月さんと連絡が取れないと心配されていました」
意外だな。ガリ子がいつも旦那からメールの返信がない事を気にしていたから、マメに連絡を寄越すような旦那ではないと思っていたが、ガリ子の事を一応は気にかけているのか。
「ガリ子は空港でスマホを無くしたそうだ。それで連絡が取れないんだろう。黒田、その事をすぐに旦那に伝えてくれるか? それから、ガリ子は元気で俺の仕事を手伝ってくれているから心配はいらないし、危険な事は絶対にさせない。あとホテルの部屋もちゃんと分けている。これは、まあ、旦那が気にしているようだったら伝えといてくれ。くれぐれもガリ子が旦那に叱られる事にならないように言葉には気をつけろよ」
「わかりました。ご主人には私からきちんと伝えておきます」
「うん。頼む」
「ところで先生、小説の進み具合は?」
それが黒田の一番聞きたい事だろう。
俺に小説を書かせる為に、ガリ子をいきなりフランスに送り込む程、強引な男だからな。
「心配するな。筋書き通りに物事は進んでいる」
「では、もう、葉月さんの心は掴んだという事でしょうか?」
俺の書いたプロットではもう結ばれている頃か。
恋愛経験の少ない女は簡単に落とせると思っていたが、現実はそう上手くいかんな。二度も好きだと言ったが、ガリ子には全く相手にされていない。悔しいが、ガリ子の心は旦那にあるんだろう――という事を今は黒田には言えないな。どうしたものか……。