先生と私の三ヶ月
「せ、先生、冗談はやめて下さい」
 先生の手を振りほどこうとするけど、解けない。先生は強い力で私の腕を掴む。心臓がドクドクとする。先生が掴んでいる場所が熱い。

「冗談だと思うのか?」
 真剣な眼差しがつき刺さる。先生が怖い。

「だって……私にそんな事を言う人はいないから」
 声が震える。肩が震える。
 先生がさっきまでの先生と違う人に見えて逃げたくなる。

「わかっていないな。ガリ子は男が抱きたいと思う女だよ。今夜、レストランの前でガリ子を見た時から俺はずっとお前が眩しくて仕方ない。気づいているか?レストランにいた時も、バーにいる時もお前に視線が注がれている事を」

 えっ? 視線?
 辺りを見ると知らない男性と目が合った。さらに周囲を見ると今度は違う男性と視線が合う。先生の言う通り、私は注目されているの? 目を引く程、このワンピースが似合っていないの?

「お前が美しいからみんなが見ているんだよ」
「な、何を言っているんですか。そんな訳ないじゃないですか」
 私が美しいだなんて。そんな事ある訳ない。子どもの時から私はずっと冴えない。ピアノの発表会の時だって綺麗なドレスを着ても、周りの子たちに変だとからかわれた。

「ガリ子、本当にお前は頑なだな」
 先生が頬を緩めて呆れたように笑った。

「俺に抱かれろ。一晩中抱いて、お前に女としての自信を持たせてやる」
 カアッと体中が熱くなる。先生、なんて事を言うの! 一晩中だなんて。先生に抱かれるなんて……。

「顔が真っ赤だぞ。少しは俺の言葉に動揺したか?」
「先生! ふざけるのはやめて下さい」
「行くぞ」
 先生が私の腕を掴んだまま立ち上がった。

「どこに?」
「お前の部屋だよ。ここでは抱けないからな」
 頬が焼けるように熱い。なんで恥ずかしい事をサラッと言うの。
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