先生と私の三ヶ月
「先生、冗談ですよね?」

 私の腕を掴んだまま先生がバーを出て、エレベーターに乗った。階数ボタンは私たちの部屋がある6階。

「ねえ、冗談ですよね?」

 先生はバーを出てから何も応えてくれない。

「先生、なんで黙っているんですか? ねえ、先生」
「着いたぞ」
 エレベーターが6階に止まる。
 金色の扉が開き、先生が私の腕を引っ張って歩き出した。
 向かっている方向は私の部屋だ。

「先生」
 抵抗するように呼ぶけど、先生は黙ったまま。
 本当にこのまま先生は私の部屋に行くつもり? それで私を抱くの? いきなり過ぎて心がついていかない。どうしてこんな事になったの?

「鍵、持っているだろう?」
 私の部屋の前で立ち止まり、先生が言った。

「あの、本当に私の部屋に?」
「ああ」
「中に入ったらどうするつもりですか?」
「お前が今、頭の中で想像している事をする」 
 頭の中がパニック。先生がたきつけるから、とても口にできない事を今、想像している。でも、そんな事は現実にあってはいけなくて。だって私は結婚していて、人妻で……。

「鍵はこれだな?」
 いつの間にか先生が私のバックから客室のカードキーを取り出していた。
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