先生と私の三ヶ月
 男がガリ子の旦那だと聞いて、こいつがガリ子を苦しませているクソ男かと思ったら、冷静ではいられなくなった。ボコボコに殴ってやろうかと思ったが、不安げに俺の上着の裾を掴むガリ子に気づいた。

 憎らしい旦那とは言え、殴られている姿を見るのは真面目なガリ子にとってショックだろう。これ以上、ガリ子にショックを与える事はしたくない。

 腹立たしいが、少し脅すだけで勘弁してやった。

 旦那が帰ったあと、ソファに横になったまま、ガリ子は懸命に旦那を擁護した。「悪い人じゃないんです。だから、警察には行かないで下さい。純ちゃんの仕事に影響が出たら私も困るんです」そう言われて、何も言えなくなった。

「心配するな。ガリ子が嫌がる事はしないから」
 ガリ子の隣に座り、膝枕をしながらガリ子の頭を撫でてやると、ガリ子が安心したように笑った。

 手を握ってやると指先がまだ冷たく震えている。乱暴されかけて怖かったんだろう。恩人の女性に会うだけだと聞いていたので、大丈夫だと思っていたが、今日、ガリ子を一人にさせたのは失敗だった。
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