先生と私の三ヶ月
「今日は流星が来るんだ。真奈美(まなみ)と一緒に」
 真奈美さんは先生の妹さんだ。

「黒田の目的は真奈美だよ。あいつは真奈美に気があるから」
「えっ! そうなんですか」
「黒田の片思いだけどな。黒田とは二十年のつきあいになるから、あいつの片思いの年数もそれぐらいだろう」
 びっくり。そんなに長く片思いしているの?

「真奈美が結婚した日の夜、黒田が荒れてな。それで問い詰めたら、真奈美に一目ぼれだったと白状したよ。真奈美が16で、黒田が26の時だったらしい。それからずっと、真奈美が好きなようだ。あいつずっと独身だからな。しかし、今思えば黒田と結婚した方が真奈美は幸せだったかもしれない。黒田だったら真奈美を大事にするだろう」
 膝の上の私の手を握りながら、先生が形のいい眉を顰め、短く息をついた。なんか、妹さんを心配する表情にキュンとする。

「あの、真奈美さんは黒田さんの気持ちを知っているんですか?」
「知らないと思うが。真奈美は面食いだから黒田に興味がないんだ」
 黒田さん、可哀そうに……。

「ところで先生、流星君と真奈美さん、何時に来るんですか?」
「たしか、昼に来ると言っていたな」
「大変! お昼ご飯の材料が足りない! もう、先生、そういう事は早く言って下さいよ。準備する事があるんですから」
「何も出さなくていい」
「そういう訳には行きませんから。買い物行ってきます!」
 おい、ガリ子という先生の声を振り切って、先生の腕の中から飛び出た。
< 167 / 304 >

この作品をシェア

pagetop