先生と私の三ヶ月
 買い物から帰って来て、お昼のハンバーグを作っていると、流星君が台所に駆けて来た。

「ガリ子―!」
 半袖水色のTシャツに、半ズボンが夏らしい。先月会った時よりも日焼けしていた。

「流星くん、こんにちは。海でも行ったの? 真っ黒に焼けてるね」
「うん。ママと鎌倉の海に行ってきた」
「いいね。楽しそう」
 うん、楽しかったよと元気な声で流星君が答える。お父さんの事で落ち込んでいるかと心配だったけど、元気そうで良かった。

「ガリ子はかおるとパリに行ってたんでしょ?」
「よく知っているわね」
「かおるが言ってた。ガリ子と一緒で楽しかったって」
 そうなんだと、相槌をうちながらウキウキする。先生、楽しかったと思ってくれているんだ。嬉しい。

「流星、どこ行った?」
 奥から優しそうな女性の声がした。
 上品な水色ストラプのワンピース姿の女性がこっちに歩いて来た。

「ここにいたのね。もう、いきなり走り出すんだから」
 流星くんのそばで立ち止まり、女性がにこやかに微笑んだ。
 それから私の方に視線を向けた。目が合ってドキっとした。先生の妹さんだから美形だとは思っていたけど、凄く綺麗な人。ハッキリとした目鼻立ちで、華がある。黒田さんが一目惚れするのもわかる。私もドキドキしちゃう。

「アシスタントの葉月さん?」
「は、はい。葉月今日子です。7月から先生のアシスタントをしています」
 真奈美さんがくっきり二重の目を見開いた。
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