先生と私の三ヶ月
「まあ、それでお兄ちゃんはひなちゃんにわかるように沢山、浮気をして。ひなちゃんが離婚しやすい環境を作ったの。お兄ちゃん、ひなちゃんは自分と別れた方が幸せだって思っちゃったんだろうね。本当、バカでしょう? うちのお兄ちゃんって。大好きなくせに素直じゃないのよ。お兄ちゃんがやるべき事は別れる事じゃなくて、ひなちゃんを手放さない事だったのに」

 大好きなくせにか。なんか妬けるな。先生に大切に思われている元奥さんが羨ましい。

「私はお兄ちゃんとひなちゃんが両想いだってわかっていたのに、離婚を止められなかった。私のせい。私のせいでひなちゃんは……」

 真奈美さん、二人を間近で見て来て、責任を感じているんだ。でも、真奈美さんのせいじゃない。これは当事者同士の問題だと思う。

「仕方ない事だってありますよ。真奈美さんが責任を感じる事ではありませんよ」
「ありがとう。葉月さんは優しいね」
 微笑んだ真奈美さんが綺麗すぎてドキッとする。

「いえ、そんな」
 真奈美さんに誉められて照れくさい。

「ところで元奥さんはご病気か何かでお亡くなりに?」
 真奈美さんが大きく息を吐いた。

「テロ。4年前にパリでコンサートホールが爆破された事件があったでしょう。それに巻き込まれて」

「えっ!」
 びっくりして思わず立ち上がった。
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