先生と私の三ヶ月
「流星ダメ! 葉月さんは何も悪く……」

 真奈美さんが止めるのと同時に、流星君がホースのレバーを押した。物凄い勢いで水が流れ、私に直撃する。頭から爪先まで一瞬にしてびしょ濡れ。水鉄砲がまだ可愛いと思える攻撃だった。

「こら!! 流星――!」
 真奈美さんが庭中に響く怒声をあげ、流星君の手からホースを奪った。

「こんな事しちゃダメでしょう!!」
 流星君がびっくりした顔をした次の瞬間、大きな目を潤ませて、ふえんっと泣き出した。

「真奈美さん、私は大丈夫ですから」
 きっと流星君は私が真奈美さんを泣かせていると勘違いして、助けようとしたんだ。ママを守る為にしたのに怒られてしまって、なんか可哀そう。

「葉月さんにちゃんと謝りなさい!!」
 腰に手をあてた真奈美さんの声がさらに響いた。
 怖い……。真奈美さん、優しく見えるけどお母さんなんだ。

「が、ガリ子……」
 流星君がせき込みながら、言葉にする。「ご、ごめん、ね」と涙の間から言ってくれた。きゅぅぅぅん!なんて可愛いんだろう。小さな子供が泣きながら謝る姿は反則的に可愛すぎる。

「流星君、謝ってくれてありがとう。大丈夫だよ」
 流星君の頭を撫でると、わーんと声をあげて泣いた姿が健気でやっぱり可愛い。
 流星君を抱きしめて、よしよしと背中を撫でてあげた。

「葉月さん、本当にごめんね。シャワー浴びて来た方がいいわね。寒くない?」
 真奈美さんが心配するように私の肩にバスタオルをかけてくれた。確かに少し寒い。

「はっ、ハックシュン!」
 真奈美さんの前で盛大なくしゃみが出た。
 恥ずかしい。

「葉月さん、冷えたのね。シャワーで温まって来て」
「はい。あの、行ってきます」
 サンルームに向かって走った。
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