先生と私の三ヶ月
 その日の午前中、黒田さんから電話をもらった。私が質問する前に黒田さんは上原さんが自分で辞めたのではなく、先生にクビにされた事を教えてくれた。

 なんでも夜中に下着姿で先生のベッドに入り込んで迫ったそうだ。それを聞いて、若い子って大胆な事をするなと思ってしまった。

 上原さんがかなり先生の事が好きだというのも黒田さんからの話でわかった。他のアシスタントが辞めた理由については、以前に真奈美さんから聞いていた通りだった。

「ああ見えて先生は真面目な方なんです。だから安心して下さい。先生は絶対に浮気はしませんから。葉月さんの事をいつも大切に想っておられます」

 黒田さんの発言に耳が熱くなった。

「う、浮気だなんて、そんな……」
 なんか、先生の本当の恋人になったみたいで恥ずかしい。

「私はただのアシスタントですから」
「恋人ではないんですか?」
「ええーと、その」
 何と言ったらいいのだろう。期限付きの恋人だと言えばいいのか。

「すみません。葉月さんを困らせてしまいましたね」
「いえ」
「葉月さん、ありがとうございます」
 いきなり黒田さんにお礼を言われてびっくりした。
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