先生と私の三ヶ月

9話 決断

 8月14日。久しぶりに喪服を着た。今日は母の新盆の集まりだった。
 
 父と母の眠る水森(みずもり)家の墓は、千葉県の館山市にあるお寺にあった。墓の管理は水森家の長男である伯父夫婦がしてくれている。
 今日は母の妹にあたる叔母も従妹の理奈ちゃんを連れて来てくれた。

 父と母の親戚に会ったのは、母の葬儀の時以来。
 墓前でお坊さんがあげてくれている真言宗のお経を聞きながら、純ちゃんともし、離婚する事があっても、私は一人にならないんだと思った。

 私には父と顔がよく似た伯父もいるし、私の体調をいつも気遣ってくれる叔母もいる。高校生の理奈ちゃんだって久しぶり会ったら、妹みたいで可愛い。

 天涯孤独の身となってしまうと思っていたけど、違うのかもしれない。
 初めて純ちゃんと別れても大丈夫なんだと思った。

 純ちゃんは昨日、上海から帰国し、今朝は車で館山まで来て、今は私の隣に喪服姿で立っている。さっき理奈ちゃんが純ちゃんを見てカッコイイと言っていた。それを聞いて先生の方がカッコイイよと心の中で思ってしまった。

 もう純ちゃんに何の興味もない。一緒にいるだけでなぜかイラつく。
 なんで私、純ちゃんと夫婦でいるんだろう。

 こんな事、父と母の墓で考えるのは不謹慎かもしれないけど、考えずにはいられない。
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