先生と私の三ヶ月
俺の隠れ家だと言って先生が連れて来てくれたのは横浜の桜木町にあるバーだった。
カウンター席が20あるぐらいの広さだった。席は三分の一ほどが埋まっていて、私は先生に連れられて奥から三番目の椅子に腰を下ろした。
BGMには邪魔にならない音量でピアノの曲が流れ、落ち着いた雰囲気があった。
「望月さん、おかえりなさい」
執事でもしていそうな白髪交じりの上品な紳士がカウンター越しに先生に声をかけた。
「マスター、シャンパン2つ」
かしこまりましたと言って、マスターがフルートグラスに入ったシャンパンを先生と私の前に置いてくれた。
「どうしてシャンパンなんですか?」
「お祝いだから。今日はガリ子の新しい門出の日だ」
離婚をそんな風にとらえる事もできるんだ。でも、めでたいって気持ちにならない。心はズタズタに傷ついていて、どちらかというと泣きたい気分。
「離婚した日、俺はこの店でずっと愚痴っていてな。そしたら、マスターが新しい門出じゃないですかって、シャンパンを出してくれたんだ。不思議とそのシャンパンを飲んだら、気持ちの区切りがついてな。まあ、ガリ子が俺と同じかはわからんが、一緒にここでシャンパンを飲みたくなったんだ」
「気持ちの区切りですか。先生も離婚した時は悲しかったんですか?」
「悲しかったよ。別れたくなかったから。二度と結婚するもんかと思ってシャンパンを飲んだ」
「元奥様の事が大好きだったんですね」
「好きだったよ。俺の初恋だったからな。ガリ子はどうして悲しいんだ?」
「どうしてだろう……」
フルートグラスの中のシャンパンを見つめながら考える。
カウンター席が20あるぐらいの広さだった。席は三分の一ほどが埋まっていて、私は先生に連れられて奥から三番目の椅子に腰を下ろした。
BGMには邪魔にならない音量でピアノの曲が流れ、落ち着いた雰囲気があった。
「望月さん、おかえりなさい」
執事でもしていそうな白髪交じりの上品な紳士がカウンター越しに先生に声をかけた。
「マスター、シャンパン2つ」
かしこまりましたと言って、マスターがフルートグラスに入ったシャンパンを先生と私の前に置いてくれた。
「どうしてシャンパンなんですか?」
「お祝いだから。今日はガリ子の新しい門出の日だ」
離婚をそんな風にとらえる事もできるんだ。でも、めでたいって気持ちにならない。心はズタズタに傷ついていて、どちらかというと泣きたい気分。
「離婚した日、俺はこの店でずっと愚痴っていてな。そしたら、マスターが新しい門出じゃないですかって、シャンパンを出してくれたんだ。不思議とそのシャンパンを飲んだら、気持ちの区切りがついてな。まあ、ガリ子が俺と同じかはわからんが、一緒にここでシャンパンを飲みたくなったんだ」
「気持ちの区切りですか。先生も離婚した時は悲しかったんですか?」
「悲しかったよ。別れたくなかったから。二度と結婚するもんかと思ってシャンパンを飲んだ」
「元奥様の事が大好きだったんですね」
「好きだったよ。俺の初恋だったからな。ガリ子はどうして悲しいんだ?」
「どうしてだろう……」
フルートグラスの中のシャンパンを見つめながら考える。