先生と私の三ヶ月
コーヒーを持って書斎に行くと、机の前で先生が厳しい表情をしながらノートパソコンを見ていた。小説が行き詰っているのだろうか。
「あの、先生」
一度目では気づいてもらえず、二度声をかけると、先生が慌ててノートパソコンを閉じた。
「何だ?」
険しい表情のまま先生が私を見た。
「休憩なさってはどうですか? 真奈美さんから頂いたロールケーキとコーヒーをお持ちしました」
「流星と真奈美はもう帰ったのか?」
「はい。さきほど」
「そうか」と言って、先生は机から離れ、ソファに座った。
休憩するという合図だ。私はテーブルの上にコーヒーとケーキを置き、失礼しますと言ってドアに向かって歩いた。
「行ってしまうのか?」
甘えるような声が背中にかかった。
「お邪魔かと思いまして」
「いてくれ」
先生がソファを叩いた。
そんな風に先生が私に甘えて来たのは久しぶり。
純ちゃんと離婚してから、先生は私と距離を取っているように見えた。
「もう九月も半分が過ぎたな」
隣に座ると先生が世間話をするように口にした。
「そうですね」
「10月からはどうする? このまま俺のアシスタントを続けるか?」
「いいんですか?」
「お前以上に優秀なアシスタントはいないよ。お前がいてくれるから小説が書けるんだ」
先生の言葉が嬉しい。
でも、このまま先生に甘えていいんだろうか。また私は誰かに依存して生きようとしていないだろうか。
「その顔は悩んでいるな。まあ、前向きに考えといてくれると嬉しい」
先生はいつも私の気持ちを尊重してくれる。
「はい」
「少しは気持ちの整理はついたか?」
「おかげさまで。あの日、先生とシャンパンを飲めて良かったです」
先生が穏やかな笑みを浮かべ、膝の上の私の手を握った。
「その言葉を待っていた。明日はデートをしよう」
思いがけない誘いに鼓動が速まる。
「デートですか?」
「うん。お前とデートがしたい」
「あの、先生」
一度目では気づいてもらえず、二度声をかけると、先生が慌ててノートパソコンを閉じた。
「何だ?」
険しい表情のまま先生が私を見た。
「休憩なさってはどうですか? 真奈美さんから頂いたロールケーキとコーヒーをお持ちしました」
「流星と真奈美はもう帰ったのか?」
「はい。さきほど」
「そうか」と言って、先生は机から離れ、ソファに座った。
休憩するという合図だ。私はテーブルの上にコーヒーとケーキを置き、失礼しますと言ってドアに向かって歩いた。
「行ってしまうのか?」
甘えるような声が背中にかかった。
「お邪魔かと思いまして」
「いてくれ」
先生がソファを叩いた。
そんな風に先生が私に甘えて来たのは久しぶり。
純ちゃんと離婚してから、先生は私と距離を取っているように見えた。
「もう九月も半分が過ぎたな」
隣に座ると先生が世間話をするように口にした。
「そうですね」
「10月からはどうする? このまま俺のアシスタントを続けるか?」
「いいんですか?」
「お前以上に優秀なアシスタントはいないよ。お前がいてくれるから小説が書けるんだ」
先生の言葉が嬉しい。
でも、このまま先生に甘えていいんだろうか。また私は誰かに依存して生きようとしていないだろうか。
「その顔は悩んでいるな。まあ、前向きに考えといてくれると嬉しい」
先生はいつも私の気持ちを尊重してくれる。
「はい」
「少しは気持ちの整理はついたか?」
「おかげさまで。あの日、先生とシャンパンを飲めて良かったです」
先生が穏やかな笑みを浮かべ、膝の上の私の手を握った。
「その言葉を待っていた。明日はデートをしよう」
思いがけない誘いに鼓動が速まる。
「デートですか?」
「うん。お前とデートがしたい」