先生と私の三ヶ月
「いらっしゃいませ」
 ドーソンに入るとテンション低めの声で出迎えられた。

 二日前に来た時と同じ、ちょっとくたびれたおじさんがレジにいる。
 おじさんも深夜に働いていて大変だよね。と、心の中で呟きながら目当ての物を探す。

 えーと、ロールケーキ、苺のロールケーキ。

 あったー! 今夜は一つ目のお店で見つけられた。
 ないと何軒も行く事になるんだよね。望月先生、妥協しないから。

「ありがとうございました」
 テンションの低いおじさんに見送られて外に出た時、ポケットのスマホが振動した。

 望月先生からだ。きっと催促の電話だ。
 通話ボタンをタップした。

「先生、今苺のロールケーキ買いましたから」
「やっぱりロールケーキはいらない。セブンのクリームあんみつが欲しい」
「えっ、クリームあんみつですか」
 目の前のドーソンを見た。クリームあんみつならロールケーキの下の棚にあった。
「絶対にセブンじゃないと駄目だぞ。他の所だとあんこの味が違うんだよ。ちゃんとセブンで買って来いよ」
 電話は一方的に切れた。

 絶対にセブン……。
 だったらもっと早く電話してよ。坂道、余計にのぼったじゃない!

 という言葉を飲み込んで、前輪のカゴにドーソンのレジ袋を入れて、自転車に跨った。
 これもお給料のうち。月50万円頂けるんだからこれぐらい耐えなきゃ。
< 24 / 304 >

この作品をシェア

pagetop