先生と私の三ヶ月
 先生と約束した午前9時ちょうどに玄関ホールに行った。

 階段から降りて来た先生は白のカットソーの上に黒いシャツを羽織り、黒いチノパンを履いていた。黒多めだけど、きっちり感があってカッコイイ。髪型は前髪をあげたいつものスタイルで、端正な先生の顔がよく見えて嬉しい。

 先生は何を着ても素敵だ。
 胸がドキドキとして来た。

「今日は一段と可愛いな」
 私の前で立ち止まった先生がじっとこちらに視線を向けた。

「デートだと聞いたので、張り切ってしまいました」
「俺の為にお洒落してくれたと思うと嬉しいな」
 チュッと先生がいきなり頬にキスをした。
 ひゃっと驚いて先生を見上げると、その反応も可愛いと笑われた。

「からかわないで下さい」
「お前が可愛い過ぎるんだ。よし行くぞ」
 先生が手を差し出した。その手をつないで家を出た。

 向かった先はガレージ。
 先生がベンツの助手席のドアを開けてくれた。
 今日は先生の運転で連れて行ってくれるんだ。

「ガリ子が運転したかったか?」
 車を発進させると先生が楽しげに話しかけてくる。
「もうベンツの運転はこりごりです」
「ベイブリッジを200キロで走ったよな。ガリ子は度胸があるな」
「あの時は、先生が急げって言うから」
 話しながら二ヶ月前の事が遠い昔の出来事のような気がして来た。

 まさか二ヶ月後にこうして先生とデートする仲になっているとは思わなかった。人生って本当、何が起こるかわからない。純ちゃんと離婚する事も全く想像していなかったし。軽くなった左薬指を見てしみじみと思う。
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