先生と私の三ヶ月
 ガリ子はこういう所が好きだろうと、鶴岡八幡宮の後に小町通りに先生が連れて来てくれた。
 通り沿いにお店が沢山あって目がキラキラしちゃう。可愛い和雑貨とか売っていて、珍しい物を見つけるとつい足が止まった。先生は嫌な顔せずに付き合ってくれる。

「先生、この手ぬぐい可愛い」
「あっ、先生、鳩の置物可愛い」
「足袋が売ってる!」
「この小皿、めっちゃ可愛い!」
「大仏様の切手が売ってる!」
「クレープのお店もあるんだ!」
「大仏焼き、美味しそう! あ、お団子も!」

 気づくと夢中になってお買い物をしていた。
 当然、自分で買うつもりだったけど、私が可愛いと手にしたものを先生が全部買ってしまった。

「あの先生、自分で買いますから」
「今日はデートだから全部俺が買う」
「えー、それは悪いですよ」
「遠慮するな。買ってやるのも楽しいんだ」
 先生がこんなにお財布の紐が緩い人だったとは知らなかった。
 買ってもらう事に慣れていないから恐縮してしまう。

「じゃあ、抹茶アイスは私に買わせて下さい」
 今、私たちはアイスクリーム屋さんの前に並んでいた。

「アイスぐらい買ってやるのに」
「買わせて下さい。自分で買いたいんです。お昼も先生に出してもらっているし、申し訳なくて」
「デートなんだから気にするな」
 先生が私の頭を撫でた。

「そんなに甘やかさないで下さい。先生から離れられなくなりますから」
「それが狙いだ。ガリ子にはずっとそばにいて欲しいからな」
 胸がキュンとする。どうして先生は嬉しい事ばかり言ってくれるんだろう。アシスタントの仕事、9月30日以降はどうしようかと思っていたけど、やっぱり続けようかな。
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