先生と私の三ヶ月
 午前1時半にお使いに出て、帰って来たのは3時半だった。
 クリームあんみつ一つ買うのに2時間もかかってしまった。

 近くのセブンで済めばよかったけど、売り切れで、次に行ったセブンにもなくて、その次も、その次もという事を繰り返して、5軒目でようやく見つけた。

 深夜に自転車で走り回るのはしんどかった。
 しかし、これもお仕事のうち。

 買って来たクリームあんみつを金の縁のお皿に乗せ、さらに金色のスプーンを添えて、ピカピカの銀色のトレーにのせた。その横には金の縁のコーヒーカップを置いて、淹れたてのコーヒーを注ぐ。なんか王様のおやつみたい。こういうセッティングをするのは楽しい。

 でも、眠いな。
 ゴシゴシと目をこすり、銀色のトレーを両手で持って先生の書斎に向かった。

「先生、失礼します。クリームあんみつをお持ちしました」
 ドアの外から声をかけるけど、返事がない。

 あれ? 聞こえなかった?

「先生、いらっしゃいますか?」
 今度はトントンとドアも叩いた。
 やっぱり返事がない。

「先生?」
 何度呼んでも返事はない。
 どうしたんだろう。部屋にいないのかな?

 せっかく用意したのに。
 とりあえず書斎のテーブルに置いておけばいいか。

 早くこのミッションから解放されたいし。
 もう眠くて堪らない。

「先生、失礼します」
 クリームあんみつとコーヒーを乗せたトレーを持ったまま、中に入った。
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