先生と私の三ヶ月
「全く俺とガリ子は関係のない人間だと思っていたが、意外な所でつながっていたんだな」
「えっ」
「知っているんだろ? 別れた妻がピアニストの中村ひなこだって」
 驚きで鼓動が速くなる。
 どうしよう。なんて答えよう。

「やっぱりそうか。知っていたんだな」
 黒目の大きな瞳に見つめられ、息がつまる。
 内緒にしようと思っていたのに。

「ガリ子の音大の先生の知り合いなんだってな」
 どうして、そこまで知っているの?

「真奈美さんに聞いたんですか?」
「いや。偶然知る事があって。実はお前の別れた旦那に聞いた」
「純ちゃんに……」
 純ちゃんから知られるなんて意外過ぎる。

「新盆のあと、お前が帰って来なかったから心配で中野のマンションまで探しに行ったんだよ。その時偶然、ひなことガリ子が写っている写真を見てしまってな」
 先生、マンションまで来てくれたんだ。知らなかった。

「先生、あの時は心配かけて本当にごめんなさい。それからひなこさんの事も黙っていて、ごめんなさい」
 先生に申し訳なくて、目頭が熱くなる。

「泣きそうな顔をするな。黙っていた事を責めてるんじゃないんだ。むしろ嬉しかった。ガリ子とつながっている気がして」
 嬉しいだなんて言ってくれるんだ。やっぱり先生は優しい。
 もう、気持ちを抑えられない。

「先生が好きです」
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