先生と私の三ヶ月
 二重瞼の目が驚いたように見開かれた。
 先生が戸惑っている。
 もしかして困らせた?

「す、すみません。私、調子に乗って。あっ、カモメだ」

 誤魔化すように海を見た時、先生に抱きしめられた。
 熱い瞳に見つめられた次の瞬間、端正な先生の顔が近づいて唇が重なった。
 波の音も、風の気配も何も感じなくなる。感じるのは熱をもった唇。深くて、官能的で、膝から力が抜けそうになった。

「俺も今日子が好きだ」
 唇を離すと先生が言った。

「好きだよ。今日子。もうお前しか見えないんだ」

 ドクンと大きく鼓動が跳ねた。
 胸がドキドキする。

 これは夢?
 先生が私を好きだなんて。

「日帰りのつもりでいたが、泊まっていくか?」
 先生に抱かれる所を想像して体中が震えた。

 でも、離婚したばかりでいいの?
 早すぎない?

「すまん。今のは忘れてくれ」
 迷っていると先生が気まずそうな笑みを浮かべる。
 いつも先生は私の気持ちを優先してくれる。

 そんな先生が大好き。
 迷う事なんて何もない。

「先生と同じ部屋に泊まりたいです」
「バカ。お前は本当にそういう事を言うから困る」
「困らせていますか?」
「可愛すぎて困る。本当に泊まっていくぞ。俺はもう引き返せないぞ」
「引き返さないで下さい」
 大きな手が私の両頬を包んで、また唇が重なった。
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