先生と私の三ヶ月

11話 先生の隠し事

 検査と処置を終えた先生は青白い顔で病室のベッドに寝ていた。
 点滴をしている姿が普段より弱々しく見えて心配になる。

 先生の書斎で大きな物音がして、駆けつけてみれば床に先生が倒れていた。救急車を呼び家から20分離れた大学病院に先生は搬送された。

 病院の廊下で処置が終わるのを待っている間は生きた心地がしなかった。

「そんな顔するな。大した事ない」
 あははと笑った先生の声にいつもの張りがない。

「ちょっと鎌倉で羽目を外し過ぎたかな」
 夜も朝も先生に抱かれた事を思い出して、頬が熱くなった。
 あれからまだ二日しか経っていない。

「こんな時に何言ってるんですか」
「もう腹の痛みは落ちついたが、入院しなくてはダメか?」
「当たり前です。手術は明日なんですよ」
「今日子と離れるのは寂しいな」
「心配しないで下さい。ちゃんと入院している間のお世話もしますから」
「そばにいてくれるのか?」
「先生のアシスタントですからね」
「恋人ではないのか?」
「まあ、恋人でもありますけど」
 口にするだけで照れくさい。

「今日子、キス」
 甘えたような表情を先生が浮かべる。
「だ、ダメですよ。病院なんだから」
「個室だから誰もいないだろう」
「看護師さんがすぐに来ると言っていましたよ」
「今は二人だけだ」
 甘えん坊の先生が可愛すぎる。
 先生にこんな甘い一面があったなんて知らなかった。

「しょうがない人ですね」
 ベッドに寝たままの先生にキスをしようと顔を寄せた時、スライド式のドアが開いた。

「望月先生! ご無事ですか!」
 慌てた様子で黒田さんが病室に駆け込んで来た。
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