先生と私の三ヶ月
「葉月さん、人が良すぎます! 私、あまりにも酷いと思って今日、先生に会いに行ったんです。それで小説の事を聞いたらヒロインのモデルはいない。これは完全な空想上の人物だと突っぱねられたんです。私がこんな事を言う資格はないと思いますが、先生のアシスタントは早くお辞めになった方がいいです。先生は今後もまた葉月さんを利用して勝手に小説を書きますよ。いや、もしかしたら次の小説のヒロイン候補を見つけて、先生の方から葉月さんをクビにするかもしれない」

 次の小説のヒロイン候補……。
 そんな……。

「葉月さん、先生のそばにいたら絶対に辛いだけです。次の小説のヒロイン候補と先生が一緒にいる所を見て平気でいられるんですか?」

 心がぐらぐらと揺れた。

 愛されていなくても、先生のそばでお世話ができるのなら、それでもいいと思った。けど、先生が私以外の人と恋をする所は見たくない。

「それに、葉月さんをモデルにして書いた小説はもう書き終わっているんですよ。つまり先生にとって葉月さんはもう用済みなんです。先生のそばにいたら苦しみますよ」

 私はもう用済み……。

 涙が溢れた。
 苦しくて胸が引き裂かれそうになる。

 嗚咽を堪えながら床に崩れた。

「先生に捨てられますよ」

 ダメ押しするように上原さんの言葉が心臓に刺さった。刃物で直接刺されたみたいに痛い。
< 282 / 304 >

この作品をシェア

pagetop