先生と私の三ヶ月
 苦しくて辛いのに、それでも先生と触れ合いたい。愛されてなくても好きだから。

 先生が小説の為に私に利用したなら、私も先生を利用する。
 9月30日までの最後の5日日間はひたすら先生に甘える事にした。

「一緒に寝たいのか?」
 夜、枕を持って寝室に行ったら、パジャマ姿の先生が困ったような笑みを浮かべた。

「ダメですか?」
「いや、嬉しいよ」
 広い先生のダブルベッドに入ると、抱きしめてくれた。
 先生の温い体温が心地いい。逞しい胸板も、甘い匂いも、先生を感じさせるものに包まれて幸せ。

「病院にどうして来なかった?」
 先生の胸に顔を寄せていると、静かな声が響いた。
 少し責めるような言い方に聞こえる。

「風邪です」
「本当に?」
「他に理由があるんですか?」
 短くついた息が聞こえた。

「いや。それならいいんだ。今日子が俺から離れていきそうで少し怖かったんだ。でも、良かった」
 逞しい腕が私の背中を強く抱きしめた。

「ずっと一緒にいよう」
 先生の言葉に泣きそうになった。
 先生はどんなつもりでそんな事を言うの?
 先生の気持ちがわからない。

「今日子、ずっと一緒にいよう」
 黙っていると先生が私を見つめ繰り返した。

「はい」
 9月30日まではそばにいます。
 先生と恋人でいる事を約束したから。
 
 心の中で呟き、私から唇を重ねた。
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