先生と私の三ヶ月
 9月30日の夜。

 今夜が先生と過ごす最後の夜。

 抜糸が済んだ先生は私を寝室のベッドに連れて行った。
 先生から誘って来たのは退院後初めてだった。

 ずっと今日子を抱きたかったと言われて、泣きそうになった。嘘だとわかっていても、物凄い熱量を感じて先生の言葉が胸に響いた。

 今夜は先生の言葉が本物のように思えた。
 ベッドの上で絡み、パジャマはあっという間に脱がされ、肌と肌がぶつかった。
 いつも優しい先生にしては珍しく乱暴な抱き方だった。
 乱暴というのは少し違うのかも。余裕がないんだ。いつもどんな時も余裕があったように見えた先生が、今夜は全く余裕がないように見える。

 必死にしがみつくような、そんな抱き方で私を求めてくる。
 先生はずっと熱い声で、私を好きだと言い続けた。

 これは本当の愛じゃない。
 先生が愛しているのは私じゃない。

 わかっているのに、私も好きだと言い続けた。
 偽りの愛でも溺れていたかった。
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